証とは何ですか?
漢方薬局でよく聞く「証(しょう)」とは?
漢方薬局や漢方薬について書かれた記事などで「証(しょう)にあった・・・」「証(しょう)にあわせて・・・」という言い回しがよく出てきますね。
「証(しょう)」は、もともと「證」と書き「(患者が医者に)告げること」を意味します。
中医学での「証(しょう)」とは、現代医学でいう「病名」のようなものですが、実際には「本人の自覚症状」+「体に表れている他覚症状」を指します。
場合にもよりますが、大抵「証(しょう)」は、体格や年齢や性別、経過や季節、生活環境、生活習慣、食生活などによって変化するものなので、漢方相談のたびに「証(しょう)」を確認することが大切です。
証は4つの要素から成っている
表裏
表裏(ひょうり)の表(ひょう)は体の外側に出ている症状のことで、裏(り)が体の内側に出ている症状のことです。
例えば「表」には頭・皮膚・関節・咽頭部に出ている頭痛・悪寒・咽頭痛などがあり、発症が急で、進行のスピードも速いという特徴があります。
「裏」には血液や血管・内臓に出ている血圧・疲労・下痢などがあり、変化もゆるやかですが、時間をかけて育てられた病因または慢性的な原因があるため、治療にもそれなりの時間がかかるという特徴があります。
虚実
虚実(きょじつ)の虚(きょ)は足りないこと、実(じつ)は過剰なこと、を意味します。中医学では心と体のトータルバランスを整えることで健康を目指していきます。
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」のことわざの通り、何事もほどほどが丁度良く、足りないのも過剰なのも良くありません。足りない場合は補い、過剰は場合は排出を促します。
寒熱
寒熱(かんねつ)の寒(かん)は体の働きが低下していること、熱(ねつ)は体の働きが亢進していること、を意味します。顔色が青白いという寒証の場合は温める処方を、のぼせや鼻血など熱症の場合は冷ます処方を用います。
陰陽
中医学の基本理論、陰陽五行論(いんようごぎょうろん)に基づいて、状態が陰と陽どちらに傾いているか、今後の方針を決めるキーとなるので丁寧な見極めが重要となります。裏・虚・寒は陰証であり、表・実・熱は陽証です。
中医学ではこの陰陽のバランスをとても大切にしています。
もともとは、太陽による光と影の観察(伏義氏による)からきたので、陰陽は固定されたものではなく常に変化します。どんなに変動しても常にバランスがとれていれば問題ありません。例えば、「いつもは調子が良いのに、台風が近づいてくると激しい頭痛がする」「健康に問題はないと思うのに、赤ちゃんを授からない」という場合、やはりバランスが取れていないから、ということになります。
環境によって、年齢によって、季節によって、いつも同じというわけにはいかないわたしたちの心身です。養生方法や漢方薬もその時々に合わせて対応していきましょう。
証の判断材料は・・・?
人間の五感、視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚をフルに使って病態を判断するのが中医学ですが、現代の漢方相談では、問診(もんしん)、聞診(ぶんしん)、望診(ぼうしん:舌診ぜっしんを含む)、切診(せっしん)に加えて、病院での検査値や血圧、基礎体温表などの数値データも参考にします。
※切診(せっしん)は医療機関でのみになります。
問診(もんしん)
病気や症状の発生した状況や経過、自覚症状、他に気になる症状はないか、既往症や現在服用している薬などを問うことを問診(もんしん)といいます。病態によってはご本人だけでなく、家族の状態を聞くこともあります。
病気や症状の全体像を把握するうえでとても重要になります。
聞診(ぶんしん)
聞診(ぶんしん)は、せきの音や話す声の状態(太い・細い等)、また息切れや話し方、怒りっぽいのかマイペースなのか、口臭や体臭、便の匂いなどで判断する方法です。母親が赤ちゃんの健康状態を確認する時にする方法と同じですね。
切診(せっしん)
切診(せっしん)は、脈を触ったり、おなかを触ったり、押して反応や感触を確かめたりする方法で、医療機関でのみ使用できる方法です。
望診(ぼうしん)
望診(ぼうしん)は、視覚を使った方法です。
中医学の古典『黄帝内経(こうていだいけい)』では、「能合脈色可以万全(脈診と望診を上手に行えば、どんな難病の診断でも行える)」と記されています。顔色や姿勢、分泌物があるかどうか、また、舌診(ぜっしん)といって舌を見る方法があります。
※漢方薬は医薬品です。あなたにピッタリのお薬をお選びいたします。服用の際は必ず薬草堂坂重薬局へご相談ください。
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