食中毒
梅雨時期から夏の終わりまで、心配になってくるのが食中毒です。
食中毒の原因には、毒キノコやフグなどの自然毒、ヒ素やダイオキシンなどの化学物質、微生物(細菌・ウイルス)があります。人間の食中毒発症は細菌によるものがおよそ6割、ウイルスによるものが3割ほどと、ほとんど微生物によるものです。
気温や湿度が高くなり、食べものの傷みが早い、細菌の増殖スピードが速くなる6月~8月にかけては食中毒警報が各所から発令されます。冬はノロウイルスの集団感染が多くなっています。
細菌の種類
食中毒を起こす原因になる細菌には黄色ブドウ球菌、腸チフス、パラチフス、赤痢菌、ボツリヌス菌、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ、腸管出血性大腸菌、カンピロバクターなどがあります。ウイルスにはノロウイルスやロタウイルスがあります。
細菌 | 潜伏期間 | 感染経路 | 症状 | 特徴 |
黄色ブドウ球菌 | 1-5時間 | 汚染された手指 | 下痢・嘔吐 | 熱に強い |
腸管出血性大腸菌 | 2-8日 | 食肉、野菜 | 発熱・血便・下痢・腹痛 | 溶血性尿毒症症候群 |
腸チフス、パラチフス | 10-14日 | 保菌者の排泄物に汚染された水など | 徐脈(脈が遅くなる)・バラ疹(バラの花の様に見える赤い斑)・脾腫・下痢 | 再発の可能性あり |
赤痢菌 | 1-5日 | 汚染された手指、水 | 発熱・血便・下痢・腹痛・嘔吐 | 感染力が強い |
ボツリヌス菌 | 4時間-10日 | ボツリヌス毒素を含んだ食物の飲食・傷口感染 | 四肢の麻痺・便秘・排尿困難・発汗困難など | 自然界で最も強い毒素 |
カンピロバクター | 2日-7日 | 主に鶏肉の生食・接触、保菌動物との接触 | 発熱・下痢・腹痛・嘔吐 | ポピュラーな菌、少ない菌数で発症、乾燥に弱い |
サルモネラ菌 | 8時間-3日 | 鶏卵、肉類、ペット | 血便・発熱・腹痛 | 集団発生 |
腸炎ビブリオ | 8-24時間 | 魚介類(生食) | 下痢・血便・おう吐・腹痛 | 海水温が20℃以上で海水中で大量に増殖 |
ウェルシュ菌 | 6-18時間 | 肉類、魚介類、野菜を使用した煮物 | 腹痛・下痢 | 熱に強い、別名「給食病」、前日調理した煮物などを常温で冷まし、次の日に食べて集団食中毒となるパターンが多い |
ウイルス | 潜伏期間 | 感染経路 | 症状 | 特徴 |
ノロウイルス | 1-2日 | 二枚貝、排泄物の接触 | 下痢、嘔吐 | 冬に多い・集団発生 |
ロタウイルス | 1-3日 | 排泄物の接触 | 下痢、嘔吐 | 冬に多い |
加熱食事は安全?
加熱や冷凍処理では、死滅または不活性化しない細菌もいます。加熱さえしていれば絶対に大丈夫!とはいえないということです。
細菌やウイルスの感染予防には
生肉や魚は新鮮でも菌を保有しています。生で食べるものと加熱して食べるもの、調理器具の使い分けと手洗いをキチンとしましょう。
中まで火がとおったものを調理当日中(梅雨時期は数時間内に完食か冷蔵庫)に頂きましょう。
傷口には黄色ブドウ球菌が付着している時があります。怪我している手で調理は避けましょう。
調理器具や箸や食器は清潔に保ちましょう。
発展途上国では、水や生ものの飲食、生物との接触、衛生面に気をつける。
じゃがいもの発芽部分と光が当たった部分(緑色に変色、変色しない時もある)には有毒成分であるアルカロイド(主にα-ソラニンとα-チャコニン)が含まれているので注意しましょう。
じゃがいも毒素アルカロイド
じゃがいもの発芽部分(メのところ)と、光が当たったところには有毒成分であるアルカロイド(α-ソラニン、α-チャコニン)が含まれています。よく「じゃがいもを調理する時は芽をとる」「緑部分はむく」と言われていますが、気をつけたいのは緑色に変色していない表皮でも、アルカロイドが多く含まれていることがある、という点です。アルカロイドによる中毒症状は、食べてから20分後、腹痛・吐き気・嘔吐・下痢・めまい・脱力感などが現れ、ひどい時には呼吸困難になります。一般的に成人で200~400mg、子どもでは20mgで中毒症状を起こすといわれています。
じゃがいも調理方法
*芽をとる
*皮は1mm以上むく
*緑部分は全て取り除く
*苦味やえぐ味がある時は食べない尚、加熱などの調理法によりアルカロイドは除去できないことも覚えておきましょう。
また、家庭菜園や学校菜園など、自分で栽培したじゃがいもはアルカロイド量が高い可能性があるため、食べる時には十分注意しましょう。(不適切な栽培方法、未成熟で小型のものは食べない)
食中毒にかかってしまったら
食中毒はやはり毒なので排出が優先されます。現代医学では「吐くだけ吐かせる」「出るだけ出させる」「ひどい時には胃や腸の洗浄をする」「脱水予防の点滴」といった対応が挙げられます。中医学(中国漢方)でも毒は体の外へ排出しきる、事が大切です。よって、嘔吐止めや下痢止めといった薬は毒が排出されず体内に留まるため、ともすれば体内でどんどん増殖し、却って症状を悪化させる危険もあるので使いません。
そして、忘れてはいけないのが傷ついた臓腑のケアです。
特に腸のおけつ(血の流れが滞った状態)を改善する為、活血・腹痛止め・抗菌作用を併せ持つサンザシなどを用い、整腸作用の優れた生薬を組み合わせて対応していきます。また、中医学(中国漢方)の考え方では、胃は通降をつかさどるといいます。食べもの、飲みものは、食道から胃→腸→排泄、といった流れからも、上から下へ通っていくものだとわかります。
そうした性質の胃気(いき)が、何らかの理由で傷つけられてしまうと、上へ上へと逆流する(胃気上逆)ことがあります。症状としては、吐き気・嘔吐・むかつき・げっぷ・しゃっくり・食欲不振などがあり、こうした状態には、胃気が下へ下へ流れるように改善する方法が用いられます。
下痢に下剤を用いる
腹痛を伴う下痢で、「塊が混じり排便後もスッキリしない」「赤痢菌による下痢」「腐った卵のような臭い」「抗生物質の使いすぎによる急性腸炎」などの時には、下剤作用のある生薬を用いることがあります。
これを『反治法(はんちほう)』または『通因法(つういんほう)』といいます。
下痢を起こしているもともとの原因、腸のなかの細菌・ウイルス・病菌・毒素などを、便といっしょにすべて出し切ることで中毒症状を治める方法で、下剤とともに胃腸の機能を強くし、消化を促進する生薬を併用すると尚良いです。
下剤の服用ではなく、浣腸を使うこともあります。
一例ですが、殺菌のために黄連(おうれん)や白頭翁(はくとうおう)を、腸の血流を改善するために丹参(たんじん)や当帰(とうき)を、腸を収斂させるために五倍子(ごばいし)や明礬(みょうばん)を、粘膜保護・修復のために烏賊骨(うぞくこつ)を、こうした生薬を複数配合した薬を浣腸することで、対応する方法もあります。浣腸を用いる利点は胃の負担が避けられることです。
ひとりひとりの症状や状態、体質にあった、適切な方法で対応することが大切ですね。
代表的な漢方薬
イスクラ勝湿顆粒、五行草茶、晶三仙、イスクラ冠元顆粒、葛根湯など。
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