健康診断の新基準
2014年4月、日本人間ドック学会と健康保険組合連合会が、健康診断の新しい基準範囲を公表いたしました。基準範囲というのは、健康診断を受けた際、ここまでが「健康」ここまでが「注意」といった指標値のことです。
今までの基準範囲と新しい基準範囲
現基準範囲 | 新基準範囲 | |||
BMI (肥満度) |
男性 | ~24.9 | 18.5~27.7 | |
女性 | 16.8~26.1 | |||
血圧 | 収縮期 | ~129 | 88~147 | |
拡張期 | ~84 | 51~94 | ||
血液一般 | 白血球数 | 3200~8500 | 3036~7611 | |
赤血球数 | 男性 | 400~539 | 437~536 | |
女性 | 360~489 | 392~485 | ||
ヘモグロビン | 男性 | 13.1~16.6 | 13.7~16.4 | |
女性 | 11.9~14.6 | 11.9~14.6 | ||
ヘマトクリット | 男性 | 38.5~48.9 | 41~48 | |
女性 | 35.5~43.9 | 36~44 | ||
血小板数 | 13.0~34.9 | 15~33 | ||
血糖 | 空腹時血糖値 | 男性 | ~99~99 | 83~114 |
女性 | 78~106 | |||
HbA1c | 男性 | ~5.5 | 4.97~6.03 | |
女性 (30-44) |
4.83~5.83 | |||
女性 (45-64) |
4.96~6.03 | |||
女性 (65-80) |
5.11~6.20 | |||
尿酸 | 尿酸値 | 男性 | 2.1~7.0 | 3.6~7.9 |
女性 | 2.6~5.9 | |||
尿素窒素 | 9.0~22.0 | – | ||
クレアチニン | 男性 | ~1.00 | 0.66~1.08 | |
女性 | ~0.70 | 0.47~0.82 | ||
脂質 | TC (総コレステロール) |
男性 | 140~199 | 151~254 |
女性 (30-44) |
145~238 | |||
女性 (45-64) |
163~273 | |||
女性 (65-80) |
175~280 | |||
HDL-C | 男性 | 40~119 | 40~92 | |
女性 | 49~106 | |||
LDL-C | 男性 | 60~119 | 72~178 | |
女性 (30-44) |
61~152 | |||
女性 (45-64) |
73~183 | |||
女性 (65-80) |
84~190 | |||
中性脂肪(TG) | 男性 | 30~149 | 39~198 | |
女性 | 32~134 | |||
肝機能 | AST(GOT) | 男性 | 0~30 | 13~29 |
女性 (30-44) |
12~24 | |||
女性 (45-64) |
13~28 | |||
女性 (65-80) |
15~31 | |||
ALT(GPT) | 男性 | 0~30 | 10~37 | |
女性 | 8~25 | |||
γ-GTP | 男性 | 0~50 | 12~84 | |
女性 | 9~40 | |||
血清総蛋白(TP) | 6.5~8.0 | 6.5~7.9 | ||
アルブミン | 男性 (30-44) |
4.0~ | 4.1~4.9 | |
男性 (45-64) |
4.0~4.8 | |||
男性 (65-80) |
3.9~4.7 | |||
女性 | 4.0~4.8 | |||
ZTT | 2.0~12.0 | – | ||
総ビリルビン | 0.4~1.0 | 0.4~1.6 | ||
ALP | 男性 | 100~360 | 119~303 | |
女性 (30-44) |
94~237 | |||
女性 (45-64) |
105~316 | |||
女性 (65-80) |
123~341 | |||
基準範囲が変更されたことで、例えば血圧が収縮期 140 の方ですと、今までは【注意】だったのに、新しい基準範囲では【健康】と判定されるケースがでてくるということです。
なぜ、基準範囲を変更したのでしょうか。
人間ドック学会によると、平成23年度に人間ドックを受診されたおよそ150万名のデータを基に策定したとのことです。
今までの基準範囲は予防医学的な閾値(しきいち)であり、新しい基準範囲は実際に健康な方の実態値、つまり現状に即した値である、というわけです。
但し、これまでも健康診断の基準範囲は受診機関によって異なっていたため、A病院では「健康」、B病院では「要注意」、といわれることがありました。
ですので「受診機関によって閾値が異なったり、基準範囲がコロッと変更されたりするのであれば、健康診断なんてアテにならないのではないか」という声が聞かれます。
健康診断は本当に意味のあるものなのでしょうか。
健康診断は受けた方がいい?受けなくてもいい?
健康診断は、人間の定期検査の意味が強いですね。
自動車を安全に継続使用する為に、皆さん車検(継続検査)を受けていますね。人間の体も、加齢とともに機能が低下していきます。その機能低下を、治せなくなる前に見つけて、病気を防ごう!というのが健康診断です。外見ではわからない体の変化が、数値化されて目に見える形となって出てくるので、わかりやすい、とても大切な検査だと思います。
ただ、車検と違う点は、車検では検査で不具合が見つかった時は同時に直す事もできますが、健康診断はあくまで検査のみ、ということです。
健康診断で異常が見つかりました、と言われても、その後どうするのかは本人に委ねられています。
検査値も同じことがいえると思います。
検査値が「注意」でも「今までは注意だったけど今回は健康」でも「閾値に限りなく近い健康」でも、その後どうするのかは本人次第です。
一番大切なことは『大きな変化、今までと違う変化を見せている値に注目する』ことです。
人間には個性があります。
体重が60kgで、ベスト体重だという人も、肥満だと感じる人も、やせてしまったと感じる人もいます。例えば、今まで血液検査 AST(GOT)20IU/l、ALT(GPT)21IU/l、γ-GTP 35IU/l の男性が、AST(GOT)28IU/l、ALT(GPT)30IU/l、γ-GTP 50IU/l になった場合、新基準範囲では『健康』と診断されますが、明らかに変化が見られます。
過去の診断結果の数値と比較すること、また、「最近だるさが抜けない」「体調が悪い」といった本人の自覚症状を一番大切にして、しかるべく対応をしていくのがベストだといえます。
健康診断後はしっかりチェック!
健康診断が終わると、喉もと過ぎれば熱さ忘れる・・・で検査値など忘れてしまう方もいるでしょう。
せっかく費用も時間も費やして得た結果なのですから、しっかり自分の健康に生かしましょう!!
気になる病気がわかるチェックポイントを一部ご紹介します!
高血圧性疾患
高血圧性疾患は血圧(収縮期血圧:最高血圧)140mmHg以上
血圧(拡張期血圧:最低血圧)90mmHg以上に注目!!
高血圧性疾患は日本で最も多い生活習慣病で、罹患者は4000万人以上ともいわれています。
ただちに生活に支障がでるわけではないので放置したままの方も多く、合併症の脳出血や脳梗塞、くも膜下出血、狭心症、心筋梗塞、などが発症してから「ある日突然・・・」「こうなると思わなかった」といったケースが多く見受けられます。
動脈に圧力がかかり続けている=血管が破れやすくなっている。
脂質がたまりやすく、血管を詰まらせていく。といった、高血圧性疾患の恐ろしさを忘れずに。
もちろん自覚症状はでにくく、自覚症状がでた時にはすでに手の打ちようがない、ということも多いので、血圧が高めの方は日頃から養生するべきです。
心疾患 血液検査(HDL-C)40mg/dl 未満
血液検査(LDL-C)140mg/dl 以上
心電図 異常
胸部レントゲン写真 心肥大等に注目!!
ここ数十年の死因別死亡率、がんに次いで2位の心疾患、多くは虚血性心疾患(心臓に血液を十分供給できない)の狭心症、心筋梗塞が割合を占めています。
血液の通り道が狭くなり、血流量が減少、心臓に痛みを感じたり呼吸困難になる狭心症は、安静にしていると5分ほどで回復することが多く、「大したことない」と、冠動脈が完全に詰まるまで放置していると心筋へ血液が流れなくなり心筋梗塞となります。
こうした病気を引き起こす原因となるのが動脈硬化で、動脈硬化になる三大原因が脂質異常症・高血圧・喫煙といわれています。
脂質異常症(HDLコレステロール値 40mg/dl 未満/LDLコレステロール値 140mg/dl 以上/中性脂肪 150mg/dl 以上)の方は虚血性心疾患になるリスクが健常者の4倍、脂質異常症+高血圧の人は16倍、脂質異常症+高血圧+糖尿病の方は32倍になる、ともいわれています。
すぐに生活に支障がでないかも知れませんが、生活習慣の改善をした方が良いでしょう。
糖尿病 血液検査 空腹時血糖値 126mg/dl 以上
血液検査 HbA1c 6.5% 以上
BMI指数 25 以上に注目!!
糖尿病には、1型糖尿病・2型糖尿病・遺伝子異常によるもの・その他の疾患、条件に伴うもの・妊娠糖尿病があります。成人の5人に一人が糖尿病または糖尿病予備軍であるともいわれています。
空腹時血糖値が 126mg/dl 以上になると、糖尿病と診断されます。
HbA1c は、過去1~2ヶ月の血糖値の状態を反映するので、HbA1c が 6.5% 以上ということは、慢性的に高血糖状態である、と考えることができます。 ただ、気をつけたいのは『隠れ糖尿病』、空腹時には異常な値がでないけど、食後に急激に血糖値が上昇してしまうタイプです。
健康診断の検査値が正常範囲でも、体調がおかしいな、変化しているな、と思ったらお気軽にご相談にいらしてください。
今すぐはじめよう!生活習慣病予防養生法
❢ 飲み過ぎ・食べ過ぎをやめよう!
毎日お酒を飲んでいる人は、せめて週に二日は休肝日。強いお酒は控えめに、また、ジョッキ飲みはやめて小さ目グラスで頂きましょう。食事はゆっくりよく噛んで、腹七分を心がけましょう。「もったない」食べは自分の体の為には良くありません。外食は半分残すくらいの気持ちで頂きましょう。❢ 睡眠をおろそかにしない!
人間にとって睡眠は、心身の疲れを癒す休息時間であるとともに、内臓のメンテナンス時間でもあります。内臓はそれぞれ活動の時間、修復の時間帯が決まっています。理想は22時には就寝、一日6~8時間くらいの睡眠が良いです。せめて23時には就寝し、足りない時間は、例えば3時や4時に早起きして充当しましょう。❢ ストレス・過労は溜めない!
ストレスや過労を放置しておくことは、病気の種を育てているようなものです。ストレスも過労も気のめぐりを悪くし、血のめぐりを悪くします。その日のうちに発散しましょう!❢ 食生活の改善、生活習慣の改善で追いつかない人は・・・
体に悪い、とわかっていても、なかなか改善できない事もあると思います。そんな時、漢方薬が強い味方になってくれます。何でもお気軽にご相談にいらしてください!!
ダイエット方法にこだわる
体重ばかりを気にして、ダイエット方法を誤っている方が多くいらっしゃいます。
健康のためには体重ではなく筋肉量やバランスを考えたダイエットをすると良いでしょう。筋肉量が増えると基礎代謝や基礎体温が上がり、免疫力もUPします。また、なかなか効果が実感できない方は体質にあったダイエット方法ではないのかも知れません。ダイエットもお気軽にご相談にいらしてください!!あなたに適切なダイエット方法をご案内いたします。
糖質は危険❢
食事でまず気をつけたいのは糖質の摂取量です。
血液中の糖分が多くなると、すい臓の働きが悪くなる他、使われなかった分は体内に脂肪として蓄積され、肥満や糖尿病の原因にもなります。糖質は体を動かすエネルギー源ですが、タンパク質も同じ働きをします。タンパク質は筋肉の原料となるものなので、同じ摂るならタンパク質で・・・ということです。
清涼飲料水、スナック菓子、揚げ物お惣菜、味の濃いもの、などはまず避けるべきでしょう。あまり無理するとストレスになる、という方は、杏仁豆腐や手作りゼリーなど、果物の甘味を活用してみましょう。お菓子やデザートを手作りすると、意外に砂糖が多く使われていることにも気付けるので、自覚できます。
おそばやライ麦パン、煮物、和食はおすすめです。お肉やお魚はしっかりと食べましょう。
健康診断のオプション検査
*胃がん
内視鏡検査です。家族にがんの方がいる方、喫煙・飲酒をされている方におすすめ。
【費用目安】¥15,000
【タイミング】1年に一回*大腸がん
内視鏡で、ポイープ、腫瘍、炎症を調べる検査です。家族にがんの方がいる方、40歳以上の方におすすめ。
【費用目安】¥30,000
【タイミング】5年に一回(ポリープのある方は3年に一回)*肺がん
CTスキャンで肺を詳しく調べる検査です。家族にがんの方がいる方、喫煙者、受動喫煙者、粉じんのある場所で働いている方などにおすすめ。
【費用目安】¥30,000
【タイミング】3年に一回(日常的に粉じん環境にいる方は毎年)*前立腺がん
膀胱、前立腺超音波検査です。前立腺がんと前立腺肥大を発見する事ができます。40歳以下でPSA値2.5以上の方、50歳以上の方におすすめ。
【費用目安】¥6,000
【タイミング】3年に一回(50歳以上の方は毎年)*乳がん
視診、触診、マンモグラフィーによる検査です。家族に乳がんの方がいる方におすすめ。40歳以上はマンモグラフィー(乳房撮影)、40歳未満の方は超音波検査をすすめられます。
【費用目安】¥5,000
【タイミング】1年に一回*子宮頸がん
子宮頚部細胞診です。女性におすすめ。子宮頚部細胞診で子宮がんの有無を調べる検査です。
【費用目安】¥5,000
【タイミング】1年に一回*脳ドック
頸動脈超音波検査や、MRI、MRAで、脳梗塞・くも膜下出血の原因となる未破裂動脈瘤を調べる検査です。高血圧、糖尿病、脂質異常症のいずれかがある方におすすめ。
【費用目安】¥38,000
【タイミング】3年に一回*腹部超音波検査
肝臓、胆嚢、すい臓、腎臓、脾臓、腹部大動脈を調べる検査です。家族に内臓疾患の方がいる方、飲酒される方、糖尿病の方におすすめ。
【費用目安】¥5,000
【タイミング】1年に一回*認知症ドック
「昨日の夕飯は何でしたか」「ここには何で来ましたか」といった新しい記憶や簡単な計算などの口頭質問を行う認知症機能検査(MMSE)と、脳の委縮がわかるMR検査です。「最近頭がぼやける」「同じものを買ってしまう」「物忘れが激しくなった」という方におすすめ。
【費用目安】¥50,000
【タイミング】3年に一回*骨粗しょう症ドック
腰椎・大腿骨の骨密度をDEXA法(二重エネルギーX線吸収法)で測定し、骨粗しょう症を調べる検査です。60歳以上の方におすすめ。
【費用目安】¥5,000
【タイミング】1年に一回*アミノインデックス
血液検査で行う、がんリスクスクリーニング検査です。胃がん、大腸がん、肺がん、前立腺がん、乳がん、子宮がん、卵巣がんのリスクを予測することが可能です。がんになるリスクを知りたい方におすすめ。
【費用目安】¥20,000
【タイミング】1年に一回
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