微熱が続く時
「風邪かな?」と最初は思って、気が付いたらもう何日も微熱が続いている、という時、他に風邪らしい症状がないという、慢性化した微熱の時、あなたはどのように対応していますか?
とりあえず抗生剤を飲んで、胃に負担をかけてしまい、却ってだるくなったりしていませんか?
微熱を訴える方の多くは、以下のような特徴があります。
熱は37.2℃~37.4℃くらい
午後から熱がではじめる
口の中が乾燥している
頭や顔がのぼせる
体がだるい
疲れやすい
尿が濃い黄色
食べても飲み込みにくいので食欲が落ちる
なぜ微熱が続いているのか・・・?
慢性的に続く微熱は、何らかの原因による津液(しんえき)の不足により、体内に熱が発生していることを意味します。
津液(しんえき)とは、血(けつ:血液)以外の体の水分のこと。津液は体のみずみずしさ、つまり、皮膚のみずみずしさや関節の潤いに欠かせないものです。
人間の体は水冷式ですから、水、つまり津液が不足すると、のどや口が渇く・手足がほてる・頭や顔がのぼせる・疲れやすい・寝汗をかく・皮膚が乾燥する・シワができやすい、といった熱症状が表れやすくなります。
このような微熱をとるためには、体をみずみずしく滋潤する必要がありますが、大切なことは「潤いを補給する」だけでなく、体を滋潤する働きを担っている腎(じん)・脾(ひ)・肺(はい)の三つの臓のどこに原因があるかを調べ、そもそもの原因を解決していくことです。
渇いた砂漠にコップの水をいくら注いでも焼け石に水ですね。目先の渇きだけにとらわれていると、同じことの繰り返しになります。
人間の体は自らを潤す力をもっていますので、今の渇きを潤すと同時に、その力を正常にしていきましょう。
また、薬剤などによって胃腸が弱くなっている方には、特に胃腸(脾)の働きを改善していく必要があります。
水を飲んでも体は潤いません
よく「水分が足りないなら、水を飲めば治るんじゃないの?」と思われる方がおりますが、実際に「水を飲んで治りました!」という話は聞きません。
体内の水分は水(H2O)だけではないというのも一つですが、体内で水分代謝をコントロールしている腎(じん)が正常に機能していないと、水分が体内のすみずみにいき届かないからです。
中医学では、まずこの腎(じん)の働きを正常化し、津液を増やし、体内で有効に活用する、という方法を用います。以下に代表的な漢方薬とその特徴をご案内いたします。
六味丸(ろくみがん:六味地黄丸)
地黄(じおう)、山薬(さんやく)、山茱萸(さんしゅゆ)、沢瀉(たくしゃ)、茯苓(ぶくりょう)、牡丹皮(ぼたんぴ)で構成されています。腎の機能を補い、津液を増やし、津液を有効活用できるように作られた処方(滋腎生津法)です。
八仙丸(はっせんがん)
六味丸に呼吸器系や皮膚の機能を補う、麦門冬(ばくもんどう)、五味子(ごみし)の二味を足して、更に生津力を強めた八仙丸は、肺と腎を同時に滋潤する処方になっています。せきやたんが出る方やアレルギー体質の方に適用され、体質改善の目的で用いられています。
八味丸(はちみがん:八味地黄丸、金匱腎気丸)
地黄(じおう)、山薬(さんやく)、山茱萸(さんしゅゆ)、沢瀉(たくしゃ)、茯苓(ぶくりょう)、牡丹皮(ぼたんぴ)の六味丸に、桂皮(けいひ)、附子(ぶし)の二味をプラスオンした構成です。桂皮(けいひ)と附子(ぶし)は、体を温める作用があるので、四肢などに冷えのある方向きで、高血圧の方へは向きません。
補中丸(ほちゅうがん:補中益気湯)
黄耆(おうぎ)、甘草(かんぞう)、陳皮(ちんぴ)、当帰(とうき)、白朮(びゃくじゅつ)、柴胡(さいこ)、党参(とうじん)、升麻(しょうま)で構成されています。胃腸(脾胃)の働きを改善し、水分代謝を良くするだけでなく、補血養血(良い血を作る)する目的で作られた処方です。
夜型ではないですか?
陰陽五行論では、昼は陽(よう)、夜は陰(いん)に属しています。
体を潤す津液(しんえき)が足りない状態を陰虚(いんきょ)といいますが、夜に活動をする日を続けていると陰の消耗が激しくなり、体内の水分が足りなくなり、オーバーヒートをおこし、結果、慢性的な微熱やほてり、のぼせといった症状が表れるのです。
こうした陰の不足を補うにはまず、昼間に活動して、夜はしっかり休んで陰を補うことが大切です。
具体的には6時起床、22時就寝がベストですが、陰を養うには時間がかかりますので、焦らず続けてみてください。
微熱が続く方への養生法
食養生
冷たいもの、水分の摂り過ぎは逆効果です。体を潤す食べもの、スッポン、ナマコ、白きくらげ、レンコン、人参、トマト、キャベツ、ゆり根、梨、りんご、菊花茶などがオススメです。
唐辛子などの香辛料や塩辛いものは避けましょう。お酒やたばこは控えると良いでしょう。
夜更かしは止め、充分な睡眠をとりましょう。
汗をかかないようにしましょう。
ストレスはその日のうちに発散するようにしましょう。
性生活はほどほどに。
過労は禁物です。しっかり休みをとりましょう。
微熱と糖尿病
午後~夕方に、37.4℃~37.5℃くらいの微熱になる方で、口の渇き・のぼせ・ほてり、といった症状がある方に糖尿病または糖尿病予備軍である方がいます。
糖尿病が進行してくると、体力が落ちていき、次第に体重が減少し、ほてり感があるのに四肢が冷えるようになってきます。
ほてり感やのぼせが強い初期には、六味丸(ろくみがん)や八仙丸(はっせんがん)、または杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)といった処方が用いられますが、四肢が冷える、寒いといった後期には八味丸(はちみがん)が用いられることが多いです。
しかしやはり漢方薬は医薬品ですから、ひとりひとりの体質や状態によって適切なものを選ばないと却って症状を悪化させることもあります。
自分は糖尿病ではない、と思っていても、実は糖尿病予備軍だった、というケースもあります。
漢方薬を服用する際は、自己判断せず、坂重薬局の専門スタッフにお気軽にご相談ください。
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