それ、葛根湯でいいですか?
古典落語『葛根湯医者』、「おなかが痛いんです」という患者の訴えに医者は「それは葛根湯ですな」と葛根湯を差しだし、「頭痛が・・・」という訴えに「葛根湯ですな」と葛根湯を差し出し、付き添いの人にも「葛根湯を飲みなさい」とすすめる、というお噺があります。
葛根湯(かっこんとう)は応用範囲が広く、風邪には「とりあえず葛根湯」という方は多いと思います。
また、効果効能にも「感冒の初期(汗をかいていないもの)」だけでなく、鼻炎、頭痛、肩こり、筋肉痛、手や肩の痛み、と記載されている製品もありますので、肩こりに使われている方も多いのではないでしょうか。
葛根湯の構成生薬
・葛根(かっこん)
・桂皮(けいひ、または桂枝けいし)
・麻黄(まおう)
・生姜(しょうきょう)
・芍薬(しゃくやく)
・大棗(たいそう)
・甘草(かんぞう)葛根湯は、中国の古典医学書「傷寒論(しょうかんろん)」「金匱要略(きんきようりゃく)」に記載されています。
桂皮(けいひ、または桂枝けいし)・生姜・芍薬・大棗・甘草の五味で「桂枝湯(けいしとう)」という漢方薬があり、桂枝湯に葛根を加えると「桂枝加葛根湯」という漢方薬になります。ここに麻黄が加わって七味になったものが『葛根湯』です。
それから、構成生薬は同じでも、メーカーによってそれぞれの生薬の量が違うことがあります。また医療処方用と一般市販薬でも配分量が違う場合が多いので、比べてみると良いかも知れません。
症状にあわせて
一般に「風邪」と呼ばれているものは正確には「風邪症候群」のことで、主な原因はライノウイルスやコロナウイルス、RSウイルスといった200種類以上のウイルスによるものがおよそ9割(インフルエンザウイルスは風邪とは別の扱いになっています)、また、風邪(かぜ)症候群には「症状がくるくると変化する」といった特徴があります。
例えば「のどが痛いな」と思った半日後に「熱がでる」→「咳がではじめ」→「痰がでる」→「黄色の鼻水がでる」→「空咳になる」→「透明な鼻水になる」といった、症状が刻一刻と変化し、4日~1週間ほどで寛解または完治するのが風邪症候群です。
「とりあえず葛根湯」という方でも、症状の変化にあわせて薬も変えていくと良いでしょう。
いろいろな漢方薬
葛根湯かっこんとう
・汗をかいていない
・熱がない
・風邪の初期
・寒気がある
・鼻炎、頭痛、肩こり、筋肉痛
・体力中程度葛根湯加川芎辛夷かっこんとうかせんきゅうしんい
葛根湯にプラス
・鼻粘膜の炎症
・副鼻腔炎
・鼻づまり
小青竜湯しょうせいりゅうとう
・くしゃみ
・透明なさらさらの鼻水、水っぽい痰
・アレルギー性鼻炎、花粉症
・むくみ
・体力は中程度あるいはやや虚弱麻黄湯まおうとう
・汗をかいていない
・熱がある
・身体のふしぶしが痛む
・ゾクゾクとした寒気がある
・咳、のどの痛み
・体力がある五虎湯ごことう
・黄色いねばりのある痰を伴う咳がでる
・咳がとまらない
・気管支に炎症をおこしている
・体力中程度麦門冬湯
・熱がない
・空咳
・痰がきれにくい咳
・口やのどが渇く
・体力は中程度あるいはやや虚弱
桂枝湯けいしとう
・自然に汗がでる
・微熱
・胃腸の弱い方
・日頃から疲れやすく風邪をひきやすい
・体力は中程度あるいはやや虚弱柴胡桂枝湯
・微熱
・腹痛
・吐き気や下痢を伴う胃腸炎
・軽い悪寒
・関節の痛み
・体力は中程度あるいはやや虚弱麻杏甘石湯まきょうかんせきとう
・咳が続く、痰がでる
・のどが渇く
・呼吸がしずらい
・体力は中程度竹茹温胆湯ちくじょうんたんとう
・長引く熱
・咳や痰が多い
・体力は中程度以上は、一般的に風邪症候群の諸症状に用いられる漢方薬ですが、当店では、お一人お一人の症状や体質に合った漢方薬をおすすめしております。
※漢方薬は医薬品です。服用の際はお気軽に当店の漢方薬専門スタッフにご相談ください。
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