EDと漢方
勃起不全(Erectile Dysfunction)についてのページで、EDは大きく ● 腎陽(精)不足 ● 腎陰不足 ● 肝鬱気滞、血オ ● 湿熱 ● 驚怖傷腎 ● 心神不安 の6タイプに分けて考えるというお話をしました。
これら6タイプについて「ではどうすれば良いのか」という事で、養生法と漢方薬のご紹介を致します。
※自己判断は誤った対応につながります。実際に漢方薬を試される方はご相談にいらしてください。腎陽(精)不足(じんようぶそく)
勃起しない。または勃起してもあまりかたくならない。精液の量が少ない。精液が薄い。
虚弱体質や老化、慢性的な疾患により、体を温める力(腎精:エネルギー)が弱くなっている状態。
倦怠感、冷え性、膝や腰が弱い、耳鳴り、むくみ、脱毛、頻尿、残尿感などの症状がある。若年性アルツハイマー病になる方も多い。腎陽、腎精は生命エネルギーです。またエネルギーは筋肉で生まれる為、筋力も弱くなっています。まずは体の内と外から温めること、加えて、自分でエネルギーを作れるような体作りを目指しましょう。
首元と足元を冷やさないような服装をしましょう。生ものや冷たい飲食、砂糖の摂り過ぎは体を冷やすので避けましょう。しょうが・ニンニク・ねぎ・山芋・栗・唐辛子・シナモン・朝鮮人参・うなぎ・羊肉などがおすすめの食べものです。
漢方薬では、動物性生薬も入った補腎薬がよく用いられます。
腎陰不足(じんいんぶそく)
勃起してもあまりかたくならない。性的興奮はよくあるほう。早漏がち。慢性的な疾患、心身の疲労、性生活の不摂生などにより、体を潤す津液が不足し、のぼせ、手足のほてり、腰や膝に力が入らない、口渇、動悸、寝汗、便秘などの症状がある。
まるで強い日差しに照らされたカラカラに渇いた砂漠のよう、いくら水をやっても大地が熱しているので水はすぐ蒸発し行き渡らず、枯渇状態になっています。特に夜型生活をしている方に多いです。腎陰を養う為には、陽の昼はしっかり活動して熱を発散、陰の夜は睡眠休息、といった自然のリズムで生活することが大切です。
セロリ・大根・はちみつ・梨・豚肉・鶏卵・ほたて・牡蠣・あさり・大豆などがおすすめの食べものです。
漢方薬は主に植物性生薬の補腎薬と補陰薬を用います。
肝鬱気滞(かんうつきたい)、血瘀(けつお)
勃起しない。勃起してもかたくならない
メンタル面が弱く影響を受けやすい。自慰やセックス時に射精を我慢することが多い。
気血の流れが滞っており、緊張、心配、情緒不安、射精痛、抑鬱、顔色が黒い、胸や下腹部が痛む、などの症状がある。
中医学には『気は血の帥(すい:管理者)であり、血は気の母である』という言葉があります。ストレスにより気の流れが滞れば、血の流れも滞る、という具合に、気(生命エネルギー)と血は互いの働きに影響を与えます。気と血がスムーズに流れる為には肝臓の働き具合がポイントとなりますが、肝はストレスの影響を受けやすく、ストレスが溜まるとすぐに肝の機能は低下してしまい、気血の流れの停滞を招きます。よって、まずはストレスに強い心身を作ること、ストレスを上手に発散する方法を見つけることが重要です。
散歩やヨガ、ストレッチ、太極拳もおすすめです。また夜更かしや寝すぎは気を消耗しますので、適度にしっかり睡眠をとりましょう。また、自分なりのストレス解消法を見つけましょう。映画鑑賞、釣り、ゴルフ、お友達とお茶、カラオケ・・・「趣味が無い」という方は寄席や演芸にお出掛けしてみては如何でしょう。
マイワシ・サバ・アジ・うなぎ・玉ねぎ・ししとう・らっきょう・ほうれん草・トマト・紫蘇などがおすすめの食べものです。
漢方薬では、活血化瘀薬や疏肝理気薬などを用います。
湿熱(しつねつ)
勃起しない。陰部にかゆみがある。精液が白濁しやすく漏れやすい。
肉や脂肪分、甘いものの多食。お酒をたくさん飲む。肥満。がっちりした体格。セックス過剰。
津液と熱が下半身に停滞し、胃腸の調子が悪い、体が重だるい、イライラ、尿が黄色く濁る、などの症状がある。
体に余分な湿と熱を溜め込んでしまっている状態なので、これらの余分な湿熱を排出しながら、また新たに溜めないことが重要です。
まずは食生活を見直しましょう。暴飲暴食、深酒を控えて、冷たいものや脂っこいもの、甘いもの、味の濃いもの、化学調味料、ジャンクフード、スナック菓子はほどほどに、旬の野菜中心の日本食を心がけましょう。
大根・山芋・ニラ・そらまめ・れんこん・白菜・瓜・はと麦・ゴーヤ・セリ・レタスなどがおすすめの食べものです。食材の多いひじき煮やおからの炒り煮、高野豆腐とキャベツやピーマン、玉葱、人参などの野菜と炒めたおかずなど、毎日決まった時間に、腹七分でいただきましょう。
漢方薬では、清熱解毒薬、燥湿化痰薬、健脾薬などを組み合わせることがあります。
驚怖傷腎、心神不安
勃起しない。臆病で驚きやすい。精神バランスが乱れやすい。驚きすぎや恐怖心が腎を傷つけ、不眠、息切れ、動悸、抑鬱、動かなくても汗が出る、などの症状がある。
心神不安は、心(しん)と肝(かん)が関係した肝気上衝心包と解きます。【心(心臓)は神(精神)を蔵し司る】といわれており、心神が安定していれば精神活動が安定し五臓も元気!ですが、心神が不安定になると精神活動が不安定になり、特に肝気・腎・陰血に影響を与えます。
よって、肝の気をめぐらせてあげること、腎の機能を正常化すること、陰血を補い、流れをめぐらせてあげることがポイントとなります。
鶏のハツ・鶏レバー・牛肉・まぐろ・あさり・ひらめ・昆布・セロリ・アスパラガス・トマト・苦瓜・ピーマン・玉ねぎ・春菊・紫蘇、などがおすすめの食べものです。
漢方薬では、補腎薬、補気薬、養心安神薬などを組み合わせて用います。
心脾両虚
勃起しない。勃起してもかたくならない。
食が細い。寝不足。過労や神経の使い過ぎで胃腸の働きが弱く、気血が不足し、動悸、不眠、いつもだるい、などの症状がある。
頭脳労働の方や、もともと繊細で真面目な性格、ストレスを感じやすく、考え込みやすい、内に秘めてしまいがちな方に多くみられる。
脳のエネルギーとなる血(けつ)が足りず、十分にめぐらせることができない状態を心血虚(しんけっきょ)といい、そのエネルギーを生成する脾気が足りない為に消化器系の機能が低下した状態を脾気虚(ひききょ)といい、2つが合わさった状態が心脾両虚(しんぴりょうきょ)です。
心脾両虚(しんぴりょうきょ)の状態が悪化すると、重度の精神不安や認知症などにもつながりますから、症状が軽いうちに心も脾も元気にしてあげましょう。
レバー・うなぎ・鶏卵・牛乳・もち米・大豆・らっきょう・ふき・わらび・うど・かぼちゃ・かぶ・棗・竜眼肉・蓮の実・グレープフルーツ・シナモンなどがおすすめの食べものです。毎日の食生活に取り入れてみてください。
漢方薬では、補脾益気薬や補血薬などを中心に用います。
漢方薬は医薬品です。
服用の際は必ず、知識と経験が豊富な薬草堂坂重薬局の専門スタッフに必ずご相談ください。
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